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追う!マイ・カナガワ
3m超バス停、低くなってた 読者の問題提起が奏功、でも…

社会 | 神奈川新聞 | 2021年7月5日(月) 06:30

 今年1月7日に掲載した「横浜に3メートル級のバス停 なぜ?」のバス停が改善されたという。疑問を投稿した横浜市泉区の会社員渡辺聡さん(46)から「バス停が背の低いものに変更されました。誰もが暮らしやすい街に一歩前進です」と、「追う! マイ・カナガワ」取材班に連絡があった。記者は再び、現場へと向かったが…。


【1】約3メートルあった「浅間町車庫前」のバス停

 渡辺さんが昨年末に寄せた悩みは、同市西区の「浅間町車庫前」など四つのバス停が高さ約3メートルもあり(写真【1】)、車いすユーザーや子ども、高齢者に使いづらいというものだった。

 取材班が同市交通局を取材すると、同局は主にバスや地下鉄の乗車収入で経営している地方公営企業のため、「コロナ禍で乗車収入が赤字になり、すぐに新しい物に変更できるかは分からない」と説明。同局のバス停が約30種類もあるため、3メートル級が導入された経緯を含めバス停設置や管理などで不明点が多いといった問題があることも分かり、マイカナで報じていた。

【2】変更後の「浅間町車庫前」のバス停=横浜市西区

 今回、あらためて同局に聞くと、本紙の報道を受けて「浅間町車庫前」のほか、同区の「高島町」「花咲橋」「雪見橋」を合わせた4バス停は、すぐに約2メートルの標準タイプに取り替えたという(写真【2】)。港南区の「笹下港南中央通」のバス停も3メートル級だったので同様に変更。同局によると、「在庫が5本あったので、何とか購入しなくて済んだ」という。

 問題のバス停は市営バスのほか、神奈川中央交通や相鉄バスの路線が通る交通の要所にある。掲示する時刻表が膨大でバス停も高くなっていたが、同局の担当者は「時刻表を縮小印刷し、バス停の高さを抑えても全部掲示できるように工夫した」と教えてくれた。

 解決してよかった─。そんな思いで記者が新しいバス停を見に行くと、信じがたい光景に再び出合うことになった。

車道に出ないと時刻表は見えない?

【3】時刻表は両面に掲示され、片側の面は車道側に回らなければ見えない

 記者が目にしたのは、道路際すれすれに平行に置かれ、車道に出なければ時刻表が見えないバス停だった。

 新たに設置された横浜市西区の「雪見橋」「花咲橋」「高島町」のバス停。確かに高さは改善されていたが、時刻表は両面に掲示され、片側の面は車道側に回らなければ見えない(写真【3】)。

 これでは時刻表を見ようとする人が、接近してくる車両と接触する事故が起きてしまうかも、と新たな不安がよぎった。記者は道路側の時刻表を見ようと試みたが、時刻表にばかり目を配っていると、後方から来る車両に気付けず命の危険すら感じた。

【4】車いすユーザーに現場を見てもらった

 車いすユーザーの方や、お年寄りは掲示を見られないのでは。後日、投稿者の渡辺聡さんと、渡辺さんが所属する市民グループメンバーで、車いすユーザーの服部一弘さん(57)=同市戸塚区=にも現場を見てもらった(写真【4】)。

 「高さは改善されたけど、この置き方では、移動に制約のある方や子どもにとっても、すごく危ない。話にならない置き方」。服部さんは肩を落とした。

 現場を初めてじっくり見た渡辺さんも驚いた様子で「高さが変わってうれしかったけど、当事者の意見をヒアリングして、誰もが使いやすいバス停にする視点が欠けている。時刻表の縮小掲示で工夫しているが、字が小さいと見えにくい人もいる」と語気を強めた。

当局がすぐ視察、改善「市全体で考えていく」

【5】バス停が道路と垂直になるよう置き方が直された

 現場を検証後、新たに感じた問題点を市交通局に問い合わせた。担当者は「現場を確認していないので、何とも言えない」と話していたが、記者が命の危険も感じたと伝えると、同局の課長自らすぐに視察に出たという。

 その後、「確認が足りなかった。設置の仕方に問題があった」と連絡があり、バス停が道路と垂直になるよう置き方を直した(写真【5】)と連絡があった。

 同局は「みなさんに気持ちよくバス停を利用してもらいたい。今回のご指摘、非常に感謝しています」とした上で、「バス停は、道路の状況や立地条件によっても設置の仕方が変わる。交通局だけでは解決できない部分もあるので、横浜市全体で考えていきたい」と約束してくれた。

 渡辺さんの投稿をきっかけに取材したバス停の現状。1月の記事掲載後は、同市のバス運転士からも「一乗務員の立場ではすぐにどうにもできないですが、新聞の力で動かしてもらえないかと思います」との声が寄せられた。誰もが使いやすいバス停になるよう報道を続けたいし、市交通局には、多くの人の声を聴いて、一緒に考える機会もぜひつくってほしい。(蓮見 朱加)

投稿者の実感「問題をみなさんと分かち合えた」

マイカナにバス停の疑問を投稿した渡辺聡さん【右】と、車いすユーザーの視点からまちづくりを考える服部一弘さん=横浜市中区

 「街は自分だけでなく、他の人の視点を通すと問題が見えてくる。マイカナがあったからこそ、問題をみなさんと分かち合えた」。渡辺聡さんは目を輝かす。

 横浜市の交通系の推進部会で市民委員を務め、何年も前から3メートル級のバス停について市に意見を伝えていたというが、「1人の意見としか扱ってもらえず、問題視すらされなかった」と打ち明ける。読者と双方向で地域の課題に取り組むマイカナが本紙でスタートしたことを紙面で知り、長年の疑問を思い切って投稿してみたという。

 渡辺さんの疑問を取り上げたマイカナの記事は、インターネットのニュースを通して全国で共有され、信濃毎日新聞(長野県)や新潟日報にも転載された。バス停の高さはあっという間に変わり、渡辺さんは「新聞社が市民を代表して質問してくれれば、当局も回答してくれる。新聞というメディアの強みは、そこにあると思う」と語る。

 車いすユーザーの服部一弘さんも「しょうがないと諦めることが多いけれど、声を上げれば、みんなの課題だったと気付けることがあるんだと、改めて分かった」と振り返る。

 2人は「地域の民主主義を支えるのが地元新聞の役割。これからのまちづくりを担う若者にも新聞報道に興味を持ってもらえるよう、マイカナは進化し続けてほしい」と期待を寄せた。(蓮見 朱加)


 神奈川新聞社は暮らしの疑問から地域の困り事、行政・企業の不正まで、無料通信アプリLINE(ライン)で読者から寄せられた取材リクエストに幅広く応える「追う! マイ・カナガワ」(略称・マイカナ)に取り組んでいます。

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