
「従軍慰安婦」という表現は軍による強制連行との「誤解を招くおそれ」があるという理由で、「慰安婦」とすることが適切とした閣議決定。用語の規定を通して軍の関与と強制性を否定する狙いが透けて見えるが、同時に国としてそれらを認め、謝罪の気持ちを表明した河野談話を「継承している」と明言する。その大きな矛盾には、河野談話を目の敵としつつ、談話を尊重せざるを得ない否定論者のジレンマが読み取れる。河野談話を巡る政治の攻防をたどる。
「河野談話は事実上、『慰安婦』制度の強制性を認めている。談話は否定できないが、そこに述べられていることを反故(ほご)にしているのだ」。教科書問題で活動する市民団体「子どもと教科書全国ネット21」の鈴木敏夫事務局長は、閣議決定についてこう語る。
談話を無効化するような動きは政治の場で脈々と続いてきたとし、「そうした流れの延長上で、『従軍慰安婦』問題を否定したい考え方を 政府見解として権威付けたことになる 形だ」と分析した。