降雪期の空き家対策は、近隣住民や行政にとって大きな課題だ。山形県西川町の男性(68)から、木造2階建ての空き家に大量の雪が積もった写真が山形新聞のオンデマンド調査報道「寄り添うぶんちゃん」取材班に寄せられた。「地域住民の安全確保のため、何とかならないものでしょうか」。男性の切実な声を受け、記者が現場へ向かった。
空き家は道幅の狭い町道に面しており、付近には住宅が点在する。屋根の積雪は1.2メートルを超え、落雪の危険性を感じた。空き家に接続する電線は雪の重みで垂れ下がっている。
雪の壁の奥に看板が立っていた。黄色地に赤で「屋根から」「落雪」と書かれているのが見えたが、ほかの文字は埋もれていて読めない。男性は「看板があっても危険は伝わらない」と指摘し「朝は怖くて近くを通れない。何か起きてからの対策では遅いのでは」と早急な対応を願っていた。
町に取材すると、近隣住民の相談を受け、1月20日、空き家の所有者の管理状況を不適切と判断、除雪作業を求める指導書を送ったが、反応はない。同月末に「屋根からの落雪注意」との看板を立てたものの雪に覆われてしまったという。担当者は「空き家であっても所有者の財産なので、行政が直接手を加えることはできない」と話す。
2015年に全面施行された空き家対策特別措置法に基づき、市町村は、放置すれば倒壊の恐れがあったり、景観を損なったりしている物件を「特定空き家」として、所有者に助言・指導する。改善されない場合は勧告、命令に進み、従わなければ代執行で強制的に取り壊す場合もある。
しかし、今回の空き家について町は「倒壊の危険まではなく、特定空き家に該当しないと考える」とする。近く看板を掘り起こし、住民に危険を知らせるという。担当者は「それ以上は難しい」と悩ましそうに話した。
山形県建築住宅課のまとめでは、県内の空き家は約5万4200戸(18年住宅・土地統計調査)。倒壊の危険性が高い建物がある場合は「市町村の防災担当や空き家担当に情報を寄せてほしい」としている。
国土交通省によると、空き家対策特別措置法に基づく山形県の「特定空き家」に対する措置の累計実績は、昨年3月末時点で、助言・指導が787件、勧告6件、命令4件、行政代執行4件、所有者不明の空き家を公費で撤去する略式代執行2件となっている。
(山形新聞社)