川崎市はあらゆる差別を禁止し、外国にルーツのある人たちに対するヘイトスピーチに刑事罰を科す「市差別のない人権尊重のまちづくり条例」に関する啓発の取り組みを強化した。条例を解説するパンフレットを発行し、市のホームページには「よくある質問」の一問一答を掲載。差別主義者が拡散させる「悪口を言っただけで罰金」「日本人を差別する条例」といったデマや誤った解釈を否定する内容になっている。
条例を巡っては、差別主義者の瀬戸弘幸氏やヘイト団体「日の丸街宣倶楽部」などが「北朝鮮や韓国の悪口を言ったら日本人に罰金50万円」「日本人だけ処罰される日本人差別条例」といったデマを広め続けている。同様の間違った認識に基づく筋違いな批判が後を絶たないこともあり、啓発の強化に踏み切った。
「何人も差別的取り扱いをしてはならない」と明記する条例の趣旨や罰則の仕組みを解説。「対象が本邦外出身者に限定されているのは国の差別的言動解消法に基づく取り組みだから」「差別的言動の禁止は日本人に限らず誰でも対象(本邦外出身者が本邦外出身者に行うことも許されない)」と注釈を加え、「日本人差別」との解釈は条文上も運用の面からも成り立たないと理解できるようになっている。
パンフレットにも掲載した一問一答では、外国人への差別的言動だけを禁止したことや「法の下の平等に反するのでは」という疑問に、「日本人に対する差別的言動は立法の根拠となる社会的事実がないため、条例による規制は必要ない」「憲法14条は合理的理由に基づく異なる取り扱いを禁止していない。本邦外出身者とそれ以外では、地域社会からの排除という側面で置かれている状況が異なる。両者の異なる取り扱いは合理的理由がある」と説明。
「北朝鮮や韓国の悪口を言ったら罰金刑になるのか」との問いには、「条例の対象は本邦外出身者に対する差別的言動で、地域社会からの排除を扇動するもの」「外国政府への批判や悪口を言ったことをもって処罰されることはない」と断言している。
市人権・男女共同参画室は「条例が目指す差別のないまちづくりには条例の正しい理解が欠かせない。質問への回答は市の公式見解。ネットで公開したことで広く市民に浸透し、デマを耳にしたときに『それは間違いだ』と打ち消すものとして利用されることも期待している」と話している。(石橋 学)