親元でも施設でもなく地域で1人暮らしをする重度身体障害者と介助者の日々をユーモアたっぷりに伝える音楽劇「海老満月」が7日、オンライン配信される。
一回きりの人生をとことん楽しもうとする障害者の生き方に触発され、生きづらさを抱えた自分を見つめ直していく介助者たち。「人はもっと自由に生きられる」というメッセージが込められている。
海老原さんがモデル
モデルになったのは、筋肉が次第に衰える難病「脊髄性筋萎縮症」当事者で車いすを利用する海老原宏美さん(43)=川崎市出身。
障害の有無にかかわらず共に学ぶ教育を重視した母親との二人三脚で小中学校の普通学級に進み、県立生田高校を卒業。横浜市内の大学進学を機に介助者との生活を始めた。
現在は人工呼吸器を着けて東京都東大和市で暮らしながら、障害者の自立生活を支援する団体の理事長を務める。
資格取り、自ら介助も
企画したのは、川崎が拠点の若手俳優育成団体を主宰し、自身もミュージカル俳優の茂木理(もぎあや)さん(45)。
生田高で2学年下だった海老原さんとは、合唱部で活動を共にした。
人の手を借りて自由奔放に生きるだけでなく、周囲を巻き込んで人の輪を広げることが上手な友人の魅力を広く伝えたいと発案。暮らしぶりを知るために介護資格を取り、昨年6月からは週1回ペースで夜間に介助に入っている。介助者たちへの取材も重ねて脚本を練った。
迷惑掛けたっていい
劇中では、何かができなかったり、できなくなってしまうことへの不安を抱えた大学院生の介助者が登場する。
「できないことは人に頼めばいい。頼める人がたくさんいれば、たくさんの人の能力を借りられる」と言う海老原さんとの関わりを通じ、「人に迷惑を掛けてはいけない」「自分の事は自分でやらなければ」といった固定観念が揺らぎ、人と関わる面白さに気付いて新たな一歩を踏み出す。
茂木さんは「誰もが失敗したり、迷惑を掛け合ったりしながら生きていく。自らを追い詰める形で生きにくさを抱えている人が、今とは違う生き方を見いだす機会になれば」と観劇を呼び掛けている。
午後1時からと午後5時半からの2部制。75分間の上映後、海老原さんと茂木さんの対談もある。
チケットは2200円。公演後も20日まで購入可能で、21日まで何回でも視聴できる。海老満月チケットのウェブサイトで申し込む。問い合わせは、茂木さん主宰団体にメールで(aac2016jp@gmail.com)。(成田 洋樹)
障害者から学ぶ人生の楽しさ・豊かさとは 音楽劇、7日配信
海老原宏美さん(2019年11月撮影) [写真番号:500858]
日本酒が大好きな海老原宏美さんと介助者が飲み会をする場面の稽古を重ねる出演者たち=1月30日、川崎市国際交流センター [写真番号:500856]