地震、津波、原発事故。東日本大震災で営業を続けられなくなった福島県浪江町の居酒屋「招楽」が秦野市に店を移し、3年余りが過ぎた。
新型コロナウイルス禍が追い打ちを掛け、苦難の日々は続くものの、4代目の本田裕典さん(42)は自らに言い聞かせるように言う。
「過ぎた時間は戻らない。どうするかは自分次第だ」
知られたくない「福島から」

絶望感にさいなまれ、覚悟を決めた。「店を直しても、客は戻ってこない。もうここには帰らない」。
店の被災状況を目の当たりにし、営業の継続を諦めた。「全町避難」を余儀なくされた震災の翌月、2011年4月のことだ。
原発、コロナ…続く試練 浪江から秦野「前に進むしか」
常連客が多く足を運んだ福島県浪江町の「招楽」(本田珠子さん提供) [写真番号:488309]
秦野で新たな一歩を踏み出した居酒屋「招楽」。店の看板は母子2人で描いた=2020年12月、秦野市南矢名2丁目 [写真番号:488313]
看板メニューの唐揚げ定食。浪江の当時と変わらない濃い目の味付けが特徴 [写真番号:488314]
感染対策のシートごしに笑顔を見せる本田裕典さん(右)と珠子さん [写真番号:488315]