原爆や戦争、平和を主なテーマに公演を続け、上演回数が「日本一」になったプロの腹話術師がいる。長崎県出身の、しろたにまもる(本名・城谷護)さん(80)=川崎市幸区。35年余り全国を駆け巡り、重ねた公演回数は4300回を超えた。「国民が、おかしいことはおかしいと判断する力を付ける手助けをしたい」。この思いを原動力に、昨今は避けられがちな話題もユーモアにくるんで問い続ける。
ちょうネクタイ姿で相棒の人形、ゴローちゃんに語り掛ける。
「ゴローちゃん。食べ物の中で何が好きですか」
「カレーライス!」
「おいしいよねぇ。でもさ、カレーライスって言ってはいけない時代があったんだよ」
「ウッソー。何デ」
「日本はアメリカとイギリスと戦争したから敵の国の言葉でしょ。使っちゃいけなかったんだよ」
「ナラ、何テ言ッタノ」
「辛(から)み入り汁かけ飯(めし)」
「マズソウ。ウッソー!」
コロッケは「油揚げ肉まんじゅう」、バイオリンは「ひょうたん型糸こすり器」-。強引に日本語に変えねばならなかった時代の異様さを伝えつつ、とぼけたやりとりで笑い飛ばす。
「芸人だから、戦争のことでも面白おかしく伝え、笑ってもらわねば」