
晴れた日の冬の朝、生活道路に約70トンもの土砂が崩れ落ちた。逗子市池子で2月、マンション下の斜面が崩落、市内在住の県立高校3年の女子生徒=当時(18)=が巻き込まれて死亡した事故から、1年近くの時が流れた。
現場には今も、花やジュース、本など生徒への追悼の品が並んでいる。地元住民らは生徒の命が失われた事故を重く受け止め、再発防止を願ってきた。一方で、7月豪雨では三浦半島をはじめ県内で61件に上るなど斜面の崩落は相次いでいる。
崖地を切り開き宅地開発した地域で暮らす私たちは、今も危険と隣り合わせだと取材を通じて痛感した。いかに地域ぐるみで安全を守っていくか、課題に向き合い続けたい。
ジレンマ抱え
逗子の事故は2月5日午前8時ごろに発生。県の土砂災害警戒区域に指定されている斜面は高さ15メートルで、擁壁で補強されていなかった上部が崩れた。
斜面は市道が整備された1959~62年ごろの造成とみられるが詳細の記録はない。斜面上には70年に大阪の会社の社員寮が建ち、その後2004年に現在も建つマンションが完成している。
現地を調査した国土交通省は3月に公表した最終報告で、「地表面の低温、凍結、強風の複合的な作用で風化が促進された」と分析しつつ、崩落の直接的な引き金は不明とした。
事故が浮き彫りにしたのは、各地で民有地の安全対策が進んでいない現状だ。費用面や所有者の合意などで、困難がつきまとう。