選択的夫婦別姓は一部の女性だけでなく、これから結婚したい、あるいは結婚している全ての男女の問題─。そう訴えるのは、夫婦双方の姓を残そうと37年前に事実婚を選んだ山崎精一さん(71)=東京都調布市=だ。夫婦別姓訴訟で原告として闘い、「問題への男性の理解を深めねば」と願う思いを聞いた。

夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗ることも認める選択的夫婦別姓を巡り、早大の棚村政行教授と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」は60歳未満の成人男女を対象に調査を実施。全国7千人が回答し、自身の同姓、別姓支持を問わず「他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」との意見が計7割という結果が11月に発表された。ただ、女性で80・2%、男性で61・0%と、男女の意識差が浮かび上がった。
発表会見で、山崎さんは原告の一人として登壇。「男性に、結婚するときに姓をどうするか自分の問題として考えることを訴えたい」と語った。
1983
東京都の清掃事業の職員だった山崎さんが、栄養士だった「妻」と事実婚したのは1983年だった。
出会いは、山好きメンバーで集まったハイキング。少しずつ恋愛を意識していき、4年後に結婚話が具体化する中で、妻から「女性が当たり前に男性の姓に変えるのは女性差別ではないのか」と姓を変えないことを強く望んでいると伝えられた。
山崎さんは自分が姓を変えると提案したが、妻は「あなたも自分の名前を大事にして」と返した。2人は「民法が改正されたら、婚姻届を出すかどうか考えよう」と事実婚を選んだ。
結婚せずに子を持つ女性が「ふしだら」とされた時代。妻の父親の理解が得られず、結婚式に出席してもらえなかった。長男が誕生し区役所に届け出た際、父母の欄にそれぞれの氏名を書くと、目の前で職員は山崎さんの名前を抹消。やむなく、受け入れた。