県内在住の作家中脇初枝さんは今夏、一冊の絵本「つるかめ つるかめ」(あすなろ書房)を発刊した。収めたのは、困ったとき、怖いことがあったときに人々が唱えてきた「おまじない」。新型コロナウイルスという未知の病が世界中を覆った2020年。絵本は子どもたち、そしてかつて子どもだった大人たちへ語り掛ける。「おくびょうで、こわがりでも、だいじょうぶ」─。
絵本を制作しようと思い立ったのは春先のことだった。全国の小中学校が一斉休校となり、ほどなくして緊急事態宣言が出され、外出自粛の動きが広がった。
「当たり前の生活が突然失われ、先行きが見通せず、多くの人が精神的にも経済的にも不安を抱えていた。外出自粛と言われたけれど、家にいることがつらい人もいる。虐待やドメスティックバイオレンス(DV)などを受けている人はどんなに苦しいだろう、と。物書きとして何かできることはないだろうかと考えました」
心に浮かんだのは、かつてどこかで耳にしたおまじないだった。
雷よけの≪くわばら くわばら≫。地震のときに唱える≪まじゃらく まじゃらく≫。痛み止めの≪ちちんぷいぷい ちちんぷい いたいのいたいのとんでいけ≫…。
「いつ教えてもらったか覚えていないけれど、いつの間にか覚えている。私自身が子どものときに唱えたものもあれば、大人になって子どもたちに口ずさんだものもあった」
忘れられない思い出がある。
不安和らげる「おまじない」絵本に 作家・中脇初枝さん
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中脇初枝さん [写真番号:443250]
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絵本「つるかめ つるかめ」(あすなろ書房、1320円)は、日本各地に伝わるおまじないを紹介する。中脇初枝さんが文章、神奈川出身のイラストレーターあずみ虫さんが絵を手掛けた。新型コロナウイルスが感染拡大する中、「不安な今を生きる子どもたちへ届けたい」と、制作期間2カ月という異例の早さで発刊にこぎ着けた。 [写真番号:443251]