
「ゴー」。映し出されたのは、住宅の脇を勢いよく流れる濁流の映像だった。「道がなくなっちゃったよ」。川のようになった道路を撮影していた住民の声も記録されていた。
2015年9月、関東・東北豪雨。鬼怒川の堤防決壊で、茨城県常総市では市域の3分の1に当たる約40平方キロが浸水し、逃げ遅れた4300人ほどがヘリコプターなどで救助された。映像はその時のものだ。
今年8月、東京都大田区が開いた「マイ・タイムライン講習会」。映像を紹介した河川情報センター参事の鮎川一史さんが受講者に投げ掛けた。「撮影していた人は自宅の2階へ避難して助かったが、家が流されてもおかしくない状況だった。堤防が壊れる前に逃げなくてはいけない」
近年相次ぐ大規模水害の教訓に学び、自分に置き換えてどう行動するか。台風接近を想定した「マイ・タイムライン」は関東・東北豪雨以降、避難対策のキーワードとなった「逃げ遅れゼロ」の柱となる一人一人の防災行動計画だ。その取り組みは鬼怒川の地元から全国に広がっている。
危機感
昨年10月の台風19号で一部の地域が浸水した大田区も、マイ・タイムラインの普及に力を入れる地域だ。
区の担当者は危機感をにじませた。「多摩川で最大規模の洪水が起きると、区域の60%が浸水する想定だ」「浸水が1カ月継続する地域もある」
猛雨・命守るため(4)行動計画 自分の「逃げ方」探る
参加者が浸水予測や家庭の状況をにシートに書き込んだマイ・タイムラインの講習会=太田区民プラザ [写真番号:336187]