
「雨の量は多いが、台風ほどではない」。心配しつつ、そう思っていた三浦市の男性農家(51)宅に隣接する急傾斜地が崩れたのは7月18日の早朝だった。住まいは紙一重で被害を免れたものの、作業小屋に土砂や樹木が流れ込んでいた。
崩落に遭うのは4年前に続き、2度目だ。当時も今回も、警戒して事前に避難することはなかったが、男性は意識を改める。「これからは雨の様子を確認し、状況によっては先に避難しようと思う」
熊本、鹿児島、福岡、佐賀、長崎、岐阜、長野の7県に警戒レベル5相当の大雨特別警報が発表された「7月豪雨」。熊本南部を流れる球磨川の大規模氾濫が象徴だが、崖崩れや土石流などによる土砂災害も多発し、17人の命が失われた。
国土交通省の8月末時点の集計では、崖崩れや土石流などによる被害は全国で計941件に上った。府県別で最多は熊本の222件。長野(72件)、鹿児島(69件)、福岡(64件)が続き、いずれも特別警報が出された4県が上位を占めたが、5番目に多かったのは神奈川(61件)だった。
疲労感
各現場を調査した県は「住宅が巻き込まれる大規模な崩落はなかった」と説明するが、崖崩れ箇所の8割が三浦半島の3市に集中。熊本を襲ったような集中的な「豪雨」ではなく、期間を通じて断続的に降り続いた「大雨」が崩落の主因だった。三浦市内で観測された7月の総雨量は、平年の3・3倍を記録した。
猛雨・命守るため(3)土砂災害 鍵握る崩落前の判断
7月の記録的大雨で三浦半島に集中した崖崩れ。逗子市の逗子海岸沿いでは、かつての崩落現場の隣接地が崩れた [写真番号:335871]