
「社員は命懸けで働いた。この仕打ちはひどい」。新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の救急搬送を巡る費用負担の混乱。請け負った民間事業者からは批判や不満の声が上がる。
下船者を救急搬送した民間救急業者(群馬県)の代表(48)は、横浜市からの費用の支払いが滞っている状況にいら立ちを見せる。
2月10日から自前の大型バスを手配し、26日まで搬送した感染者は100人ほど。近隣に搬送する消防や病院の救急車とは異なり、民間救急業者は遠方への搬送を任された。
対応した従業員はわずか2人。大人用の紙おむつをはいてハンドルを握り続けた。群馬から横浜港に乗り込み、奈良や京都、大阪など長距離を往復。感染拡大のリスクがあるためサービスエリアなどで休憩を挟めなかったためだ。搬送者の3分の1を占めたのは外国人。言葉の壁から行き先はおろか到着時間も説明できず、不安からか車内で暴れるケースもあった。
代表は「従業員に強烈なストレスがかかったが、県だけが『ありがとう』と言ってくれた」と振り返り、「税金同様に、支払いの遅れには“遅延金”を上乗せしてほしい」。行政から事後のヒアリングもないといい、「きっとまた同じことが繰り返されてしまう」と警鐘を鳴らす。