
「避難するんですか?」
座間市内で地域防災に取り組む「ざま災害ボランティアネットワーク」の濱田政宏代表(76)に電話で問うたのは、同じマンションの中層階の住民だった。
「マンションは標高80メートル近い高台にある。もしここが水没するようなら、市内はどこも危ない。家にいる方が安全だ」。そんな言葉を交わし、冷静な行動を促した。昨年10月12日、迫る台風19号が各地に記録的な雨をもたらしていた。
相模川の城山ダム(相模原市緑区)では満水に近づく恐れが生じ、緊急放流を開始。一時は座間市内でも大水害の不安が高まった。市は荒天時の屋外の移動はかえって危険として、2階以上での待避も訴えたが、避難所となった公民館には標高の高い自宅から逃げてきた住民の姿があった。
「避難を呼び掛けられると、とにかく避難所へ、と思ってしまう人は少なくない」。濱田代表は、いざという時に人々が陥りがちな心理に、あらためて気付かされた。
避難の形に地域差、機転を
「『避難』とは『難』を『避』けること。安全な場所にいる人は、避難場所に行く必要はありません」
台風19号を受け、政府が始めた「避難の理解力向上キャンペーン」。
猛雨・命守るため(2)洪水避難 臨機の対応に難しさ
葛飾区が洪水緊急避難建物に指定した立体駐車場。サインを掲示し、遠くへ避難できない時に逃げ込めるようにしている [写真番号:334632]