イメージした家具や建築物を自在に作れる最先端の木工用3D(3次元)切削加工機を使い、国産木材利用の拡大を目指すベンチャー企業が川崎市を拠点に活動を始めた。消費地として国産木材の利用促進に力を入れている市と昨年12月に業務委託契約も締結。工房を開設し、木の良さに触れてもらう木育イベントの開催や先進的木材加工技術の普及などを展開していく。
この企業は「VUILD(ヴィルド)」。慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で3D加工機の操作を学んだ建築家の秋吉浩気さん(28)と、マネジメント担当の父・正一さん(62)の2人が共同代表を務める会社だ。
同社は3D加工機を手掛ける米ShopBot社の代理店で、本社を都内から川崎区日進町に移した。同町ビル1階に今月25日に開設する工房は最先端の加工機2台を置き、見学できるようにする。
加工機は300万~400万円で、パソコンとつなぎデータを入力すると、回転する刃が数値制御で移動しながら木材を自在に切削する。熟練した技術がない素人でも、デザイン性の高い家具や遊具、内装材を製作できる。金具なしで木材をつなぎ合わせる伝統加工技術「継手(つぎて)仕口(しぐち)」も可能だ。
国産材の需要拡大は、国内林業を再生し適正な森林保全のために求められているが、利用分野では木造建築設計者や大工職などが減っている。同社は人材難を最新技術で補い、利用拡大を目指す考えだ。
浩気さんは「各地の林業家は製品の直販を始めたがっている。間伐材を有効活用し、家具や構造物を作るのに最適なマシン」と説明。すでに高知県佐川町や熊本県南小国町での導入を支援した。
2月現在、大学やホームセンターなどに16台を納品している。加工機同士でデータをやりとりすれば離れた場所でも同じ製品を作れる。浩気さんは「多くの人が大量供給型の製品に飽き足らず、自分だけの個性的なものを求めている。それに応えるインフラとなる」と話す。
「目指すのは林業と地域の活性化」と言うのは正一さん。「通常は林業家が切り出し、プレカット業者、工務店を経て製品が消費者に届くが、林業家も消費者も自ら製品化できれば流通が劇的に変わり、新たな木材需要につながる」と意気込む。
25日の工房のオープニングでは木製の全長12メートルドームの展示や家族向けのイベントも予定している。