鶴岡八幡宮(鎌倉市雪ノ下)の大銀杏(おおいちょう)が昨年強風で倒れてから1年。10日に行われた祈願祭には千人近い参拝客が詰め掛け、さらなる成長を願った。遠方からも多く訪れ「応援にと思って来たが、逆に勇気づけられた」など、力強い生命力に賛嘆の声が聞かれた。
寒風吹き荒れた1年前とは打って変わって、抜けるような青空となった10日。祈願祭は神職や巫女(みこ)ら八幡宮の職員約60人が総出で執り行った。「修祓(しゅばつ)」というおはらいの言葉を、一般参拝客とともに斉唱。供え物などをささげる神事を行った後、斎主が無数に伸びたひこばえの一部を刈り取った。
大銀杏は1年前、根と幹を分かつようにして倒れた。吉田茂穂宮司の迅速な決断で、翌日には再生を決定。幹は根側から4メートルで切断し移植、根は場所を動かさず再生を目指すことになった。
成否が不安視されていたが、わずか1カ月足らずの4月1日。神職の龍山源和さんが、夕方様子を見に行ったところ、残った根の脇から、青々とした芽が吹き始めていた。「本当にすごい生命力。大地から栄養をしっかり吸い上げている。そう実感した」と振り返る。
ただ「むしろ気を使ったのは、幹の方。ちゃんと根が付くか」。倒れた当初はほぼすべての根がちぎれ、わずかな細かい根が残る程度だったという。「夏には水をやって。ただ、やり過ぎは根腐れの危険がある。本当にみんなで丹精込めてきた」。今では、根から無数の芽が吹き、中には親指ほどの太さの枝もあり高さは2メートル近くまで再生。幹の方からも1メートルほどのひこばえが出ている。
祈願祭で斎主を務めた小峰敏司さんは「多くの支援や励ましを受け、この日を迎えることができた。感謝の気持ちでいっぱい。引き続き見守ってもらいたい」と話した。
祈願祭に友人と訪れていた藤沢市の男性会社員(28)は「逆にパワーをもらえた」。友人で横浜市青葉区に住む女性会社員(26)は「パワースポットとして噂(うわさ)になっている。すごい成長で本当に驚いた」と笑顔を見せた。
福島県から来たという農業を営む女性(85)は「一昨年に立派な姿を見ていただけに、倒れたというニュースは悲しかった。もう一度見たくて来たんだけど、すごいね。自分も、長生きしたいって思えたよ」と顔をほころばせた。