
災害から身を守るために住んでいる地域の特徴を知ろうと、防災講演会が21日、二宮町二宮の町生涯学習センター・ラディアンで開かれた。元平塚市博物館学芸員の森慎一さん(65)が講師を務め、町内を流れる葛川流域の地盤の弱さや活断層の存在を指摘し、今後起こり得る地震被害を解説。定員の80人を超える町民らが熱心に耳を傾けた。二宮災害ボランティアネットワークの主催。
森さんは同博物館に約40年間勤務し、二宮町や大磯丘陵を研究してきた。講演では、2011年の東日本大震災でも見られた液状化現象が、町内中央を流れる葛川付近の地盤の弱いエリアでも起こり得ると指摘した。
強固な地盤の縄文期の海成面(中村原面)の高地と、水を含んだ泥が主成分の「軟弱地盤」で構成される葛川低地の高低差がJR二宮駅北口交差点付近で顕著に現れていると紹介。そのほか地質調査を基に二宮消防署(同町二宮)付近の脆弱(ぜいじゃく)性を挙げるなど、町内各所の注意点を挙げた。
また、観光名所として知られる吾妻山は、山頂付近に約7万年前の海浜礫(れき)層が見られることから、断層運動によって隆起した山と断定。同山周辺にも活断層は存在し、活動履歴や周期を知ることの必要性を説いた。
将来、県内での発生が想定される南関東地震では、町内ほぼ全域で震度7が見込まれていることなどを示した。
講演に聞き入っていた自営業の男性(74)は「地質の成り立ちが生々しく伝わってきた。揺れやすい地域ならではの備えが必要だと感じた」と話していた。