横須賀市の郷土芸能で国の選択無形民俗文化財「虎踊り」が6日、同市野比の白髭神社に奉納される。江戸末期から伝わる勇壮な虎芸を継承しようと、地元の中村町内会の虎踊り保存会(根岸和夫会長)がおよそ70年ぶりに手作りの着ぐるみを制作。2年に1度の舞台で「新虎」として披露する。
虎踊りは近松門左衛門の人形浄瑠璃「国性爺合戦」に登場する「和藤内」の虎退治が題材。野比地区では1856(安政3)年に始まり、娯楽の少なかった半農半漁の寒村で休漁日などに演じられたという。
全長約2・5メートルの着ぐるみに2人ずつ入って暴れるように踊り、どう猛な様子を表現。激しく歯を打つ音を響かせることから、特に頭の部分の傷みが激しく、着ぐるみは20年程度が“寿命”とされてきた。
過去2作は業者に外注したが、今回は貴重な郷土芸能を住民らに再認識してもらうため、保存会メンバーが「昭和20年代以来」という手作りに挑戦。半年がかりで木材や粘土、発泡スチロールなどを組み合わせて直径50センチほどの虎頭をこしらえ、胴体や前後4本の脚は虎柄の生地を縫い合わせた。
現存する着ぐるみで5代目となる「新虎」は毛並みの黄色をより鮮やかにし、顔には歌舞伎の隈(くま)取りを施すなど住民のアイデアを反映。根岸会長も「迫力を増し、より本物の虎に近づいたのでは」と話す自信作に仕上がった。
6日には5組10人の踊り手が入れ替わりで虎芸を演じるが、担い手不足から計9種類の演目全てを披露できないのも課題の一つ。根岸会長は「(新虎披露を機に)携わる人の輪を広げ、地域で末永く受け継いでいきたい」と話している。
奉納は午後8時~9時半で観覧無料。虎踊りに先駆けて、同7時から地域に伝わる「謡い」などの演芸も披露される。荒天の場合、7日に順延される。