
妻から離婚できなかった江戸時代に女性が駆け込んだ縁切り寺として知られる東慶寺(鎌倉市山ノ内)で、「休状(きゅうじょう)」という名の珍しい離縁文書(もんじょ)が公開されている。入手した元専修大教授の高木侃(ただし)さん(74)は「離縁状が中国の影響を受けたことを裏付ける貴重な資料」と話す。
夫が妻へ宛てた離縁文書は、全国各地で「離縁状」「離別状」「去(さり)状」といった表題で見つかっている。江戸時代の離婚を研究し、これまでに1300通を調査した高木さんは「『休状』の表題は初めて。中国の離縁状『休書(きゅうしょ)』に影響を受けたのではないか」と推測する。
休状は京都で両替商や酒屋を営んだ商家の娘が離縁したときのもの。「文政13年」と記され、離婚理由には性格の不一致を意味する「気合申さず」とある。
当時流行していた中国の小説「水滸伝」に「休書」が登場することから、「夫は教養人で『水滸伝』に親しみ、休書に倣って休状としたと考えられる」と高木さん。離縁文書が「三くだり半」(3行半)形式で書かれた理由には諸説があるが、中国の影響を受けたことを示す貴重な資料と位置づけている。
同寺松岡宝蔵では休状のほか国重要文化財の縁切り文書約30点を展示。高木さんは「離縁状を調べると、江戸の女性が家庭で一定の地位を保っていたことが分かる。男尊女卑という一種の常識を覆している」と魅力を語り、来場を呼び掛ける。
9月4日まで、午前9時半~午後3時半。問い合わせは、同寺電話0467(33)5100。
