適切な処置で人命を救ったとして、プロ野球・巨人の1軍トレーナー根津朋将さん(37)に4日、高津消防署(川崎市高津区)から感謝状が贈られた。地元出身の根津さんは「僕がやったことはたいしたことじゃない」と謙遜する。
6月3日の朝8時40分ごろ。交流戦の大阪遠征から同区にある自宅へ歩いて帰る途中、目の前で男性が倒れた。意識はなく、心臓も動いていない。
胸骨圧迫をするとともに、近くの人に自宅マンションに備えてある自動体外式除細動器(AED)を取ってきてもらうよう指示。それを使用して処置を続けると、救急隊が到着した10分後に男性は意識を回復していた。同消防署の森下泰弘署長は「根津さんの適切な救護活動なしには命の危険もあった」と話す。
根津さんは地元川崎出身。県立百合丘高校で投手として鳴らし、プロ野球選手を夢見て横浜商大野球部に進んだ。だが大学2年で肩を壊した。「選手に故障を経験させたくないし、つらい気持ちも分かるので、トレーナーを目指した」。専門学校を経て、現場で経験を磨いた。かつて自分が憧れた舞台を支える側として、夢をかなえた。
球団では毎年、AEDの使い方などを学ぶ人命救助基礎訓練の講習を実施。「最初の講習の時に講師の方に『あなたは選手の命を救えますか』と言われ、ハッとなった」。サッカー元日本代表の松田直樹さん(享年34)が練習中に急性心筋梗塞で亡くなるなど、プロ選手にもいつ何が起きるか分からない。
「自分がやったことは、講習を受ければ誰でもできること。そうした知識が人命救助につながるということを、一般の方に分かってもらえたらうれしい」と根津さん。心筋梗塞だったという男性はその後、20日間の入院の末、後遺症もなく社会復帰し、高津消防署に感謝の電話をしたという。