自治会・町内会が柱となって、ともに支え合う地域づくりを進める平塚市の「町内福祉村」で、子どもたちの学習支援に取り組む独自の活動を続けている団体がある。9年目を迎えた岡崎地区の「学習教室ピノキオ」は、地域の“先輩”たちが小学生の学習をサポート。地域と小学校が連携し、住民同士が交流を深めながら次世代の育成を担っている。
毎週土曜、83人の小学生が町内福祉村「おかざき鈴の里」に集まり、午前9時から3時間ほど机に向かう。イタリアの童話の主人公のように、正直な心と勇気ある行動を持つ子に育つようにと名付けられた「ピノキオ」。指導役は現役を退いた元校長や技術者など地域のベテランたち計14人だ。
低学年、高学年の2部に分かれた授業は、特別なカリキュラムはなく、子どもたちの習熟度合いに応じて進めていく。読み書き計算など復習を主に、学習内容を定着させることに主眼を置いている。
運営する小林信行代表(75)は「福祉といっても高齢者が対象の介護などは当たり前。将来を担う子どもたちのために何か地域に貢献できないか、と考えていた」と話す。
登下校の見守りや地域の草刈りから始まったピノキオの活動は、今や地元の市立岡崎小学校とも連動している。学校側から要支援児童や学習内容の情報を受ける一方、ピノキオ側は学校との情報交換会で子どもたちの普段の生活ぶりを教師らに伝達。授業参観にも出席するなど双方向の連携が深まっている。同校の成重千恵子校長は「親より年上で祖父母のような感覚の『地域の先生』。少人数で丁寧に見ていただいて、児童たちも信頼している」と感謝する。
教室では、四季を感じるイベントや体験型の理科実験なども開催して交流を深めており、小林代表は話す。「講師同士のつながりもできるし、子どもたちから元気をもらえ、メンバーが若返っている感じもある」