発生から1カ月近くたった熊本地震。大型連休中、各地から熊本県内に多くのボランティアが支援に入った。鎌倉市から駆けつけた2人に、現地の状況や地元で生かすべき教訓を聞いた。
内科医・酒井さん
内科医の酒井太郎さん(46)は4月27日から5日間、益城町の避難所となっている広安小学校で医療支援に携わった。
避難者約300人、車中泊の車が200台以上止まっていた。居住スペースは3階建ての校舎で、診察のほか、夜間は寝返りが難しい人の体勢を変えて回った。
「平常時の弱者が災害時も弱者になる」と酒井さん。床での寝起きがつらくて横になりがちになったり、1階のトイレに下りるのが嫌で水分を控えたり…。高齢者や体の不自由な人に負担が重くなる状況は「東日本大震災のときと変わっていない」。無力感に覆われた。
一方で「5年前よりまし」と思えた部分もあった。電気は通じており、段ボール製ベッドや水のいらないポータブルトイレが届き、高齢者らが優先的に使えたことだ。
実感したのは弱者を支える「システム」の必要性。「例えば災害発生後、自動的にリハビリの専門スタッフが派遣されるとか。トイレに近い場所に高齢者を集めるなど避難所を一つの病院と捉えることも必要かもしれない」と課題を指摘した。「高齢者や障害のある人の目線で考えれば、誰もが過ごしやすい場所になる」
被災者に寄り添って
防災団体代表・大津さん
防災団体「鎌倉ガーディアンズ」代表の大津定博さん(53)は大型連休中、熊本市内に入った。印象的だったのはボランティアへの対応だ。
市のボランティアセンターでは学生らがスタッフを務め、手際よく作業のマッチングや班分けをしていたという。東日本大震災や昨年の関東・東北豪雨の被災地に比べてシステム化され、スムーズな受け入れ態勢だった。
受け付け後、ボランティアには手引を配布。そこには感謝の言葉とともに、被災者に配慮すべき点が明記されていた。
▽連休は家族で過ごすため手助けを望まない被災者もいる▽作業がない場合に待つのもボランティア▽がれきやごみに思えるものも「思い出の品」-。
その文章に「どこか張り切っていたが冷静になった」と大津さん。「被災者にどう寄り添うか、ボランティアのあり方を考えさせられた」と振り返った。