田植えのシーズンを前に、相模川から農業用水を用水路に引き入れる通水式が18日、相模原市南区磯部の相模川磯部頭首工施設周辺で行われた。相模原、県央、湘南地域の農業関係者が安定した水の供給と、豊作を祈願した。
相模川から農業用水を引く水路は、磯部頭首工の取水口を起点に茅ケ崎市方面の「左岸幹線用水路」と、平塚市方面の「右岸幹線用水路」へと流れ、両岸の多くの農地を潤している。
この日の通水式には、相模原-茅ケ崎の相模川左岸地域と、厚木-平塚の右岸地域の農業関係者ら約40人が出席。神事が執り行われ、亀ケ池八幡宮の神職が祝詞を読み上げたほか、関係者が順番に玉串をささげ、取水口でおはらいも行われた。
水路の管理を行う県相模川左岸土地改良区の赤井光夫理事長(80)は「先人の知恵と努力で守られてきた水路を次代につなげたい」と強調。また、14日から続く熊本地震に触れ「人口密集地で災害があった場合、これからの農業者は農地を避難場所や駐車場など多面的に活用することを考えなければならない」とも話した。
相模川左岸では昔から水害に悩まされ、上流部では磯部村や新戸村など五つの村の水田に農業用水を引くために江戸後期に「五ケ村用水」が造られたが、相模川の氾濫のたびに堰(せき)が壊された。中・下流部も排水設備の不良から水田が水没して大きな被害が出たという。
そこで1930年、当時の海老名村長の望月珪治が近隣7町村で相模川左岸普通水利組合を設立し、40年に相模原-座間-海老名-寒川-茅ケ崎の延長約21キロの水路を完成させた。