戦後70年が過ぎ、高齢化が進む戦争体験者の記憶を後世に伝えようと、南足柄市で活動する足柄史談会が体験談などを冊子「太平洋戦争下における南足柄の状況調査」にまとめた。大戦末期に南足柄を襲った空襲体験や厳しい生活事情など、生々しいエピソードが記されている。同会は足柄地方の戦時下の状況を知る貴重な資料として、市内の学校などに配布する予定だ。
「戦争体験者も80代が増えてきた。史談会としても周年ものを出版できるのは限られてくる」と押田洋二会長(83)は刊行の動機を話す。同会の有志15人とともに調査に乗り出し、市内の公民館などで12カ所77人から貴重な体験を聞き出した。
足柄地方でも1943年に富士フイルム工場が軍需工場に指定され、45年8月に南足柄、小田原の両工場が米軍に狙われるなど、戦火にさらされた。
冊子には乗務員の顔が見えるほど低空で爆撃機が襲ってきたことや、母親が涙するなか大雄山駅から出征した少年兵士、航空燃料の代わりとなる松根油を採るために切り倒された内山地区の松、苅野や狩野地区など各所に掘られた防空壕(ごう)など、記憶をたどって語られたエピソードが、当時の用語解説と併せて紹介されている。
押田会長は「活字に残すことで平和への一助にしたい」と話しており、同会は市内の各学校や図書館などに寄贈する予定。また、希望者には1部200円で販売する。問い合わせは、同会の武井延禎副会長電話0465(74)1036。