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鉄道コラム 前照灯(245)
フィヨルドへの鉄路(下) 氷河がつくった絶景

話題 | 神奈川新聞 | 2016年3月25日(金) 14:57

ミュルダル駅ホームで乗り換える。右側が支線のフロム鉄道
ミュルダル駅ホームで乗り換える。右側が支線のフロム鉄道

 ベルゲンまで行ったので翌日はミュルダルに引き返してから支線のフロム鉄道に乗る。「世界一美しい車窓風景」などといわれる山岳路線。「鉄道ファン垂涎の」といった形容もされる。この手の賛辞はあまり信用しないことにしていたが、今度ばかりはそんな疑心は無用だった。


ショースフォッセン駅ホーム間近にある瀑布「ショース滝」
ショースフォッセン駅ホーム間近にある瀑布「ショース滝」

 まずデータ。1940年の運行開始。全線20キロ余。20あるトンネルのほとんどは手掘りというから難工事をしのばせる。フィヨルド岸辺のフロムまでの標高差864メートルを1時間弱かけて駆け下りる。最大勾配55パーミル、最小曲線半径130メートル。

 ミュルダルを出るとすぐ急カーブにかかる。馬蹄形ともΩ型ともいうべきくねり、よじれ。しかもトンネル続き。明と暗が交互する旋回を繰り返しながら峡谷に分け入る。カメラをどう構えていいやら。左右どちらにどんな絶景が現れるか分からない。それも瞬時で闇の幕が引かれる。

 途中のショースフォッセン駅ではホーム下を滝が走り抜ける。あふれ出た湖水が目前に躍り、轟き、飛沫を上げる。列車も5分ほど見物の停車をするが、風が巻いて歓声も遮られる。妖精に扮した地元の歌手がドレス姿で岩場に出て美声を聴かせるが、そんな趣向を味わうゆとりはなかった。

 ほかにも大小の滝はいくらもあって目移りがする。うち1つでも日本にあればたちまち名所になるだろう。フロム駅ホームからは客船の白い姿が見渡せた。こんな山間にまで海水を導いた自然の力に驚く。氷河がえぐった地形に果敢に挑んだ鉄路。今回は船でこの地を後にするが、機会があれば今度は逆コースでこそ乗りたいものだ。(F)


フロム峡谷の最奥部。滝や渓流、つづら折りの山道もみえる
フロム峡谷の最奥部。滝や渓流、つづら折りの山道もみえる

沿線には大小、長短さまざまな滝があり、それぞれに美しい
沿線には大小、長短さまざまな滝があり、それぞれに美しい

険しい傾斜地にも寄り添うような家が散見され、心がなごむ
険しい傾斜地にも寄り添うような家が散見され、心がなごむ

終点フロム駅に到着。その先にフィヨルドの周遊船が望める
終点フロム駅に到着。その先にフィヨルドの周遊船が望める

フロム駅を出て振り返れば機関車の背後に浸食谷の崖が迫る
フロム駅を出て振り返れば機関車の背後に浸食谷の崖が迫る
 
 

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