
また昨年の話。忘れないうちに書いておこう。7月、ノルウェーのフィヨルド観光のためベルゲン鉄道に乗った。12時03分発のベルゲン行き急行は8両編成。オスロ駅の3番線から出た。西岸の旧都までおよそ7時間。標高1200メートル余のハルダンゲル高原を越えていく。

国土を東西に横断する路線。西岸から敷設が進み、1909年にオスロまでつながった。沿線は山岳地帯。眺めのよさで人気が高い。途中ミュルダルからフロム線が分岐、ソグネフィヨルド周遊の船が着くフロムまで急勾配を一気に下っていくが、そちらの支線は次回書くことにする。
車内には停車駅の案内とともに外気温と標高の電光表示があって興味をそそる。平原や森林、渓流が続き、ときに瀟洒な民家が点在する。標高の数値が上がるにつれ、夏場なのに気温表示はどんどん下がる。風景も岩や灌木の荒涼とした色合い変じていく。

用意した缶ビールを飲もうとしたら車内の飲酒は厳禁という。日本なら車窓の友として欠かせないところだが、どうも北欧など白夜の国々はアルコール管理に厳しいようだ。せっかくの旅情が味気ないのでラウンジまで移動してビールを注文したら79クローネ(約1200円)した。「ここで飲むように」と念押しもされた。
緯度が高いせいで、もう外は森林限界を超えて雪景色となった。岩肌の黒と残雪の白、わずかな雑草の緑。それらのコントラストが美しい。湖水に差し掛かると、その対照模様が上下に映し出され、列車の進行に伴い脈動するように流れる。幻想的な車窓スクリーンに乗客の歓声が上がった。(F)

