横浜市中区打越の切り通し近くにある「打越の霊泉」と呼ばれる湧き水が16日、突然濁り始めた。敷地内の地下からは巨大な遺構が見つかっており、マンション建設中に遺構の一部を壊したことで濁ったとみられる。
湧き水は坂道にある石積み擁壁の下部から流れ出ている。擁壁の上ではマンション建設工事が行われており、施工業者によると、15日に鋼材を打ち込んだところ、地下に埋まっていた高さ約2メートルの空洞状の遺構に当たった。その後、湧き水が濁りだしたという。
施工業者が遺構の由来を調べたところ、開港期に造られた地下貯水槽で湧き水の水源だった可能性があると判明。明治期にフランス人実業家ジェラールが船舶給水事業を起こす以前に打越周辺で湧き水を採取し、飲用水として外国人居留地に供給していた史実が根拠となった。
湧き水は古くは良質の水として評価が高く、関東大震災や横浜大空襲では多くの被災者を救ったと伝えられている。現在は飲めないが、生活用水として住民に利用されている。
施工業者は「井戸を掘り、水を引く工事を始める。きれいな湧き水を絶やさないようにしたい」と話す。石川打越地区連合町内会の依田龍治会長(75)は「元町公園に残るジェラールの遺構よりも古い時代の遺構ではないだろうか。湧き水の維持も大切だが、遺構調査も進めてほしい」と話している。