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挑戦の大切さ伝えたい 校長が児童との約束果たす

話題 | 神奈川新聞 | 2016年3月8日(火) 02:00

完成した湯飲みを手にする角野校長。色や形が異なるのは個性があっていいと伝えたいからだ=横浜市立北方小学校
完成した湯飲みを手にする角野校長。色や形が異なるのは個性があっていいと伝えたいからだ=横浜市立北方小学校

◆手作り湯飲み631個完成
 横浜市立北方小学校(同市中区)の角野公利校長(60)が、全校児童に贈る手作りの湯飲み茶わん631個を完成させた。1年前に、児童たちと交わした約束を果たした。これまでも水泳やフルートに挑戦、目標をクリアする過程を見せてきたが、今回も土日や長期休暇を返上し、大きさ、色、形が一つ一つ異なる湯飲みを作り上げた。子どもたちには、どれも大切な一つであることや、目標を達成することの喜びを伝えたいと考えている。 

 4月の始業式に、自身の目標を全校児童に宣言し始めたのは2011年度。1年かけて10万メートル泳ぐと約束した。「校長先生も頑張るから、君たちも年間の目標を掲げて頑張ろう。1年後の自分は、必ず変わっているはずだから」。児童たちには、そう伝えた。

 仕事帰りにプールへ通う日々。泳いだ距離を示すグラフを廊下に張りだし、「最近、サボっているね」と子どもたちに指摘されたことも。それでも、1年かけて10万メートルを泳ぎきった。

 翌年度は知り合いの校長の勧めでフルートに挑戦した。1年後に全校児童の前で演奏すると宣言したものの、「触ったこともなければ、楽譜もまともに読めない。清水の舞台から飛び降りる思いだった」。そこからは猛練習。年度末の校内コンサートで「ふるさと」などを演奏した。次の年度はさらに磨きをかけ、より高度な曲を披露した。

 14年度の目標は、箱根駅伝と同じ距離、約220キロを走破すること。「最初は1キロも走ると、息があがった」。横浜市立小学校長会会長を務め、多忙で走る時間もなかなか確保できなかったというが、卒業式前夜、残っていた7キロを走り、目標を達成した。

 定年退職を迎える本年度は、何か形あるものを残したいと陶芸を選んだ。「作った経験はあったけれども、これが思っていた以上に大変で」と苦笑い。図工室に電動のろくろを持ち込んだが、業務時間には作業はしないと決めていたため、土日や長期休暇は学校へ通い詰めた。クーラーもなく、夏はTシャツ、はちまき姿の汗だくでの作業だった。

 途中、200個ほどにひびが入ってしまうハプニングも。予想以上に手間も時間もかかったが、2月下旬に作り終えた。3月14日の朝会でお披露目、全校児童に手渡す予定だ。「今の子どもたちは、成功体験や達成感が少ない。高い目標を掲げ、挑戦することの大切さを伝えたい」

 家庭の事情で大学時代はアルバイトに明け暮れた。卒業後、自動車メーカーの営業マンとして働き始めるも教員の夢を捨てきれず、通信教育で教員免許を取得した苦労人。周囲の人に支えられ、懸命に生きてきたこれまでの人生は折々、子どもたちに伝えてきた。

 「湯飲みを見るたびに、変な校長がいたなあと思い出してくれたり、よし、自分も頑張ってみるか、と奮い立つ子が一人でもいたらうれしいですね」

 
 

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