戦後ジャズ発祥の地といわれる横須賀で、音楽で地域を盛り上げようという試みが動きだしている。昨年12月に愛好家ら有志が集い、一般社団法人「ヨコスカ・ジャズ協会」を発足。伝説のジャズ演奏場をイメージしつつ、地元商店街と連携してストリートライブを開くなど、街ぐるみで多様なイベントを仕掛けていく。
19日夜。横須賀市内のライブハウスには約100人の観客が詰めかけた。同協会の発足記念ライブに招かれたサックスの名手、中村誠一さんらの演奏に酔いしれ、「ジャズの街・ヨコスカ」復活へ期待が高まった。
終戦直後の1945年9月、同市田浦にあった旧海軍兵員宿舎で米兵向けに演奏が行われたのが、戦後ジャズの起点といわれる。市内には100軒を超えるジャズ演奏店が夜の街を彩り、全国のミュージシャンが横須賀を目指した。
その頂点にあったのが、米海軍の下士官兵集会所「EMクラブ(ENLISTED MEN’S CLUB)」。19日の発足記念ライブのサブタイトルにも使用された、ジャズ全盛期のヨコスカを象徴する施設だ。
現在の京急線汐入駅前にあり、東洋一とも呼ばれた規模を誇った。ルイ・アームストロング、フランク・シナトラなど、数々の著名アーティストが慰問で訪れている。83年10月に日本側に返還、90年10月に解体された。
ヨコスカ・ジャズ協会代表理事の長坂利広さん(50)はジャズによる街おこしの中心イメージに華やかなりしEMクラブを思い描く。「ジャズは横須賀の一種の資源。市外から人を呼び込み、もう一度街を盛り上げたい」と話す。
今後はプロを招いたライブに加え、9月に米海軍横須賀基地前の「どぶ板通り」周辺で、アマチュアバンドなどが野外で演奏するストリートライブを企画している。