
明治時代の現在の川崎区で開発され、全国に普及していった「伝十郎桃」の苗木が16日、川崎市川崎区扇町の昭和電工川崎事業所の敷地内に植樹された。
伝十郎桃は、1896(明治29)年に農家吉沢寅之助さんが開発し、父の名前にちなんで命名した。明治から大正にかけて量産されたが、その後の工業化で姿を消した。
8年ほど前から復活させようと、市や市会議員、市農業技術支援センターの協力で桃の台木に取り寄せた伝十郎桃の穂木を接ぎ木する試みがスタート。郷土教育の一環で小学校10校で育てている。
昭和電工川崎事業所は企業で唯一、接ぎ木を育てていたが、うまく実がならないこともあり、山梨県内の農家に育ててもらった苗木を植えることにした。
苗木は高さ2メートルほど。戦前に建てられ、国の有形文化財に登録されている本事務所横の芝生に植えられた。同事業所の海宝益典所長(57)は「事業活動する上で地域との共存共栄を大切にする思いを込めながら、川崎発祥の桃の木を大切に育てていきたい」と話していた。