
私立高木学園女子高校(横浜市港北区)の生徒らとパン菓子類製造のプレシア(同区)がタッグを組んで、カップ入りデザート「魅惑のティラミス」を開発した。食べた人を笑顔にしたいという生徒らの願いを込めた逸品。今月から期間限定で、各地のスーパーで販売されている。
30日まで北海道を除く全国で販売されているのは「ほっこり抹茶」「リフレッシュベリー」の2種。前者は黒蜜ソース入りメレンゲブッセの上に抹茶ムースや白玉、こしあんが載り、後者はカシスソースがかかったブッセにオレンジムースやラズベリーが加えられている。
きっかけは、今年1月に学園幹部とプレシアの商品開発担当が会合で同席したこと。同社は「互いに車で5分ほどのご近所さん。地元の縁で何か取り組めないかと以前から思っていた」、同校も「生徒がものづくりを学ばせてもらう好機になる」と、それぞれの思いが重なった。
商業科マーケティングコース2年生15人に白羽の矢が立った。甘い物好きの生徒が多く、当初は「自分が好きなものをつくりたい」と盛り上がった。
だが、実際の商品開発は厳しかった。想定納入先が市内のスーパーだったため、顧客層である30代以上の女性をターゲットにする、という条件を同社から提示されたからだ。岩間沙也加さん(16)は「つくりたいものでなく、消費者が求めるものをつくる、というマーケティングの発想の大切さに気づかされた」と振り返る。
そこで生徒らは、企業さながらの手法を採用。ターゲットに近い存在として、母親など230人を対象にアンケートを実施。また、市場調査のために個々人でスーパーの売り場を訪ね、売れ筋を見定めていった。
デザートは疲れたときや一息入れたいときに多く消費されることが分かり、「食べた人の気持ちを前向きにしたい」と発想。まさに「私を元気づけて」という意味を持つティラミスをベースに開発することを決めた。
春から夏にかけての3カ月間、週に1回ほどの頻度で同社社員が来校し、試食と修正を重ねた。器の形状までさまざま議論を尽くしたという。
こうして11月から店頭に並んだ自信作。近所の量販店で見つけた岩間さんは「うれしくて立ち止まって眺め続けた」。両親や妹、祖母と試食したという稲葉明日香さん(16)は「商品を囲み、自然と家庭の会話が弾んだ。同じように食べてくれた人の周囲でいろんな笑顔や楽しい時間が広がっていけば」と願っていた。