富士ゼロックス神奈川(横浜市西区)は、街歩きを楽しむ目的で携帯端末を使った情報サービスの試験運用を横浜、茅ケ崎両市内で進めている。飲食店や観光船、史跡などにちなむ情報を動画や音声で提供。紙媒体と連携した試みも盛り込んでいる。新事業展開を視野に、利用状況を見極めていく方針だ。
横浜の主要観光スポットに関する情報を紹介するスマートフォン向けアプリ「Mon横濱」は、同名の無料情報誌とコラボした企画。来年2月末までの期間限定で無料提供している。現在はアンドロイド搭載端末向けだが、10月末以降はiPhoneでも利用できるようになる予定。
横浜観光コンベンション・ビューローと連携した企画の一環で、誌面に掲載されている老舗レストランや商店街の紹介を動画で楽しめるのが目玉だ。読者が情報誌の誌面のマークを目印に、スマホに取り込んだアプリのカメラ機能で撮影すると、その画像に関連した動画がスマホに配信される。
この専用アプリは、紙とマルチメディアの融合を目的に提供するクラウドサービスを利用している。印刷物表面の網点の特徴を認識し、あらかじめ登録された画像情報とサーバー上で関連づける仕組み。誌面データや印刷物に特殊な加工は不必要だ。「従来培った画像技術を使うことで、紙媒体の中身の独自性が高まる。街の奥深さを知ってもらうツールになれば」
一方、茅ケ崎市内で11月末まで試行中の音声ガイドサービスは、衛星利用測位システム(GPS)とスマホ型の専用端末が連動。あらかじめ登録された史跡や名所に近づくと、端末から自動で音声が流れてくる仕組み。いわば、ガイド役を担う人を補完するツールだ。近場の散策を楽しむシニア層をはじめ誰でも使いやすいよう、端末を簡単に操作できるよう配慮したという。
従来から美術館や博物館などの屋内で音声ガイドを聴ける端末があるが、利用場所が限られ、制作者が専門業者に限られるなど、数々の制約があった。
これに対し茅ケ崎で使われている音声ガイド端末は専門知識のない人でも制作可能なクラウド上の制作ツールを利用。初期投資や維持費を抑えることができ、複数人でも作業できる。実際に、音声内容は茅ケ崎の市民団体が手作りした。
富士ゼロックス神奈川は今後、地域貢献事業として街歩き支援ツールの検証を続けていくほか、将来的には販促や教育など「多様な活用シーンに期待したい」と話している。