学者や弁護士でつくる「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」は27日、カジノを含む統合型リゾート(IR)施設の誘致を検討している横浜市で集会を開いた。講演した静岡大学の鳥畑与一教授は、市がまとめた調査報告にある経済効果について「根拠が薄弱な恣意(しい)的な推計」と疑問を示し、「長い経験を持つ米国のIR型カジノはビジネスモデルとして破綻しつつある。カジノによる地域振興は持続性のある政策とは言えず、地域経済を崩壊させる」と指摘した。
同市中区の県民ホール大会議室で「ヨコハマにカジノはいらない」と題して開かれた集会には約120人が参加。「カジノ幻想」などの著書がある鳥畑教授が専門の金融論、経営論の視点からカジノが横浜の地域経済にどのような影響を及ぼすか語った。
米国や韓国のカジノをつぶさに研究、視察してきた鳥畑教授は「カジノ大国の米国では30~40年の経験を踏まえてカジノは今、略奪的ギャンブルと呼ばれ、やめさせようという運動が起きている」と説明した。
短期的にはカジノ企業と設置地域には一定の経済利益が出るが、自分のテリトリーに客を囲い込むIRのビジネスは長期的には周辺商圏を次第に衰退させ、依存症も増え地域社会に大きな負荷をかけると説いた。
鳥畑教授は視察した米国のアトランティックシティーや韓国のカンウォンランドの例を紹介しつつ、「米国のカジノはもはや衰退産業。米国カジノ企業はマカオ、シンガポールに進出し、いま日本へという流れになっているが、米国などの姿を見るとカジノで経済活性化というのは危険だ。幻想を振りまいてはいけない」と注意を促した。
また、横浜市が山下ふ頭に計画しているハーバーリゾート構想に触れ、「シンガポールのマリーナベイ・サンズのような施設が念頭にあると思われるが、シンガポールのカジノ売り上げも減少し始めている」と述べた。
横浜市は民間シンクタンクに委託した調査で、IR開業後の売り上げ、観光消費では年間約4100億円の経済効果が生まれると試算している。鳥畑教授はこの報告書について「有識者意見による海外からの客数や、広告代理店のネット調査に基づく国内客567万人の根拠は薄弱ではないか。恣意的な経済効果のみ強調し、依存症などマイナスの影響についてはほとんど触れていない」と問題を指摘した。
「ギャンブル依存を生むカジノは焼き畑農業的だ。市民を不幸にすることで税収を増やすことは間違っている。カジノ政策の失敗に気付くのは時間がかかる。そのことを横浜市は知るべきだ」と訴えた。