肉球印のどらやきが人気 漫画とコラボ 川崎の和菓子店
話題 | 神奈川新聞 | 2015年6月10日(水) 03:00
川崎市幸区の老舗和菓子店・新岩城菓子舗が売り出した「肉球どら焼き」が、猫ファンを中心に人気を集めている。漫画「野良猫世界」に登場する猫の肉球の焼き印を押した、地元の漫画家とのコラボ商品だ。肉球にちなんで毎月29日にだけ販売する希少性も相まって、全国各地から来店客や注文が殺到。店主と漫画家の共通の願いは「地域を元気に」-。餡(あん)と一緒に、大きな夢をぎっしり詰め込む。
JR川崎駅西口近くにある栄通り商店街の一角。1931年創業の新岩城菓子舗は、早朝にその日売る分だけ作る「朝焼きどら焼き」を看板商品に、83年続くのれんを守ってきた。
しかし、西口には2006年に大型商業施設ラゾーナ川崎プラザがオープン。3代目のおかみ・徳植由美子さん(55)は「ラゾーナができて、どんどん周囲が寂しくなっている」と、かつての活気が失われつつある商店街の現状を心配していた。
そんな折、地元の常連客から新商品のアイデアが飛び込んできた。発案者は、小学館少年サンデーS増刊連載漫画「野良猫世界」の作者SP☆なかてまさん。幸区で生まれ育ち、現在も商店街の近くに事務所を構える生粋の“川崎人”だ。新岩城菓子舗にもなじみが深く、漫画に店名を登場させるほどの大ファンだという。
「大型商業施設が進出しているが、昔からやってる店は地元になじんでいて強みはある。一発、何かやってみたかった」。なかてまさんが昨年12月に提案し、和菓子とキャラクターのコラボが実現した。
肉球どらやきの表面に押す焼き印は、漫画の主人公で食いしん坊の猫「ノブナガ」の肉球と同じ大きさ。夜明け前にノブナガが店に忍び込み、焼きたてのどら焼きに自分の肉球を押しつける、というストーリーに仕立てた。どらやき1個に二つの焼き印が基本だが、「100個に1個は三つ入っている」(徳植さん)。包装紙やのし紙も肉球柄といった遊び心も受け、今では毎回600個を売る大ヒット商品に成長した。
「幸区を元気にしたい。ここに来ると楽しいな、幸せになれるな、といった店でいたい」と徳植さん。なかてまさんも「ノブナガの肉球と自分の猫の肉球の大きさを全国の猫ファンに比べてほしい」と笑う。
5日には福田紀彦市長も来店。どら焼き製造や焼き印押しを体験し、「漫画と和菓子のどこにつながりがあるのかと思ったが、混ざった時に全く新しい価値を生み出した。最高のコラボレーション」と満面の笑みを浮かべていた。
1個180円で、店頭とインターネット(毎月29日から1週間予約受け付け)で販売。問い合わせは、同店電話044(522)2721。