横須賀市が2021年度の開設を目指していた「(仮称)中央こども園」の候補地選定や土地の取得方法に問題があるとして、市議会は12日の予算決算常任委員会で、市の一般会計補正予算案から関連部分を削除する修正案を賛成多数で可決した。計画は事実上、白紙撤回された形で、既に2年遅れの開園時期はさらにずれ込む見通しとなった。
市は待機児童の解消などを目指し、国の合同庁舎跡地(同市日の出町)を候補地に選定。敷地約3155平方メートルのうち約1300平方メートルを30年間、定期借地する方向で国と調整し、約10億円をかけて3階建て施設を整備する計画だった。
市議会側は、定期借地の手法自体や、当初は購入を目指して頓挫した国有地にこだわる市の姿勢などを問題視。公明、無所属みらい、研政の3会派と無会派議員が共同で、総額約16億4700万円に上る補正案のうち同園の設計関連経費と、園舎設計委託料などの債務負担行為の設定を削除する修正案を出した。
土田弘之宣氏(公明)は常任委で議案説明し、「借地期間が(当初の50年から)短縮され、借地料も確定していないなど不明確な点が多い。廃止予定の保育園は耐震基準を満たしていることも明らかになった」などと指摘。早期整備を求める自民、市政同友会などが反対したが、20対18の小差で可決した。
市の計画では、老朽化する上町、鶴が丘の両保育園を統合、移転する形で、幼保連携型認定こども園と子育て支援センター機能を併設する施設を整備。当初は19年春の開設を予定していた。
国有地固執に疑問の声
こども園の候補地選定を巡り、市議会は昨年12月の第4回定例会で国有地の取得にかかる経費約3億5500万円を盛り込んだ補正予算を可決していた。その後、国の提示額を市の財産評価委員会が不了承としたため、市が購入を断念した経緯がある。
当初計画から2年遅れ、定期借地方式で早期整備を急ぐ市に対し、議会内では候補地を含めて再検討すべきとの声が出ていた。今回の修正案で減額されたのは設計者選定にかかる経費7万8千円だが、補正原案は建設にお墨付きを与える内容だったことから一部会派が反対した。
この日の常任委の討論では、永井真人氏(無所属みらい)が早期整備や保育園老朽化の認識は行政と同じとした上で「国との交渉が信頼関係という名の『縛り』になっていなかったか」と、あくまで国有地に固執するような市の姿勢に疑問を呈した。
市は現在、公共施設の再編統合を進めており、新規のハード整備には施設複合化の視点も求められている。吉田雄人市長は採決に先立つ総括質疑で、定期借地では施設の複合化が制約されるデメリットもあるとし、「子育て支援機能以外の分野の施設統合に至らないのは忸怩(じくじ)たる思いがある」と、現行計画がベストの選択ではなかったこともにじませた。