
「青ガエル」を覚えていますか。下膨れの顔、緑色の塗装が印象的な東急電鉄の初代5000系電車。渋谷のハチ公前広場に置かれているアレといったら分かりがいいか。製造から60年、東急から姿を消してもう30年のこの電車が、まだ現役で走っていると聞き、会いに行ってきた。
熊本市にあるローカル私鉄「熊本電気鉄道」。市電・上熊本駅前電停の向かい側に、線路もホームも1本だけの無人駅。時刻表には1時間に2本程度。しばらく待つとあの懐かしい電車が、たった1両で現れた。
かつて東横線などでは4両~6両でさっそうと走っていた青ガエル。丸みを帯びたその顔は変わっていないものの、反対側に行くと切り妻の連結面にも運転席。乗客は私のほか、鉄道好きらしいカメラを手にした女性などほんの数人。

上熊本駅から北熊本駅までの3.4キロが運転区間。途中駅では、自転車を押したお年寄りも乗ってきた。普通運賃だけで持ち込めるのだという。15人くらいまでお客が増えたところで、10分足らずの旅が終了。青ガエルは折り返して行った。
北熊本は、御代志~藤崎宮前を走る線への乗り換え駅。こちらには都営地下鉄三田線にいた電車が走っていた。車庫にはさらに古い昭和初期の電車も。懐かしい電車に会える熊本電鉄。青ガエルは2015年度にも引退との話もある。会いに行くなら今のうちだ。(a)