相模湾の海洋生物を展示する新江ノ島水族館(藤沢市片瀬海岸)が16日、開業10周年を迎えた。節目を祝おうと、新しいウミガメの展示施設が館内にオープン。世界的にも珍しい、ふ化したばかりのシラスの常設展示も始まった。
新施設「ウミガメの浜辺」は、ウミガメプールがあった場所に整備。約500平方メートルに二つのプールと砂浜を設け、アカウミガメ6匹、アオウミガメ4匹、タイマイ2匹を展示している。
海水温の調整設備を新たに導入し、冬場もバックヤードに移動させることなく周年展示が可能になった。砂浜を設けたことで産卵も期待できるという。スロープ状の観覧デッキも新設し、来館者が間近に観察できるよう工夫を施した。
オープニングセレモニーで、堀由紀子館長は「カメにとって環境に優しい施設を造った。これからも楽しく夢のある水族館を心掛けたい」とあいさつ。ことし10歳になる小学4年生200人も招待され、甲羅が1メートル以上もあるウミガメの迫力に驚いていた。
イワシの稚魚であるシラスは、同水族館で卵からふ化させて展示。ふ化直後の仔魚(しぎょ)は体長3ミリほどしかなく、このほか3センチ以上に成長した稚魚も別の水槽に入れて観察できるようにした。
湘南を代表する海産物であるシラスの展示は、同水族館の長年の悲願だった。だが、シラスは漁獲や輸送時のダメージに非常に弱いため、地元の漁師から入手してもすぐに死んでしまい、展示に至らなかった。
同水族館では発想を転換し、卵からふ化させて飼育する手法を採用。世界で初めてシラスの大量繁殖を成功させた水産総合研究センター(愛媛県今治市)に水温管理などで助言を受け、昨秋に繁殖を実現させた。
飼育担当者は「シラスの常設展示は世界的に見ても珍しい。少なくとも国内では聞いたことがない」と話している。
同水族館は2004年4月16日に、旧江の島水族館を引き継ぐ形でオープン。13年9月には来館者数が1300万人を突破した。
【神奈川新聞】