
碓氷峠越えの廃線跡を歩きたいと思っていた。それで横川行きの「第3回カナロコ列車」に応募した。現地での自由時間もたっぷりある。ところが当日は大雪。目算は出掛ける前から外れたが、それでも行きたい気持ちに変わりはなかった。
横川駅ホームでは地元の高校生たちが和太鼓演奏で歓迎してくれた。だが「鉄道文化むら」には入場できたものの、雪深く、あちこち歩ける状況ではなかった。折り返す列車もいったん回送されてしまい、わがツアーは峠下の袋小路で進退きわまる形となった。
かつては横川での機関車連結の間に釜めしを買うのが信州に入る「儀式」だった(今尾恵介著「鉄道の峠」)。その名物駅弁も団体客を前にすぐ売り切れた。今では一日どのくらい出るのかと尋ねたが、販売のおばさんは「すみません」と答えるばかり。苦情と間違われたらしい。
構内は小さくなった。考えてみればここで下車するのは初めてだ。駅前とはいえ、釜めし店のほかはコンビニひとつ見当たらない。酒やつまみの補給もかなわない。中山道の宿場近くでありながら人通りもほとんどなく、しんしんと雪が降っていた(写真)。
信越本線の往年の要衝。その殷賑と活気。しのぶべき思い出も、みな白く覆われていた。なるほど、名だたる難所は今も同じなのかも。また来よう。カナロコ列車ともども出直しである。(F)