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横浜の懐石「花里」、40年超の歴史に幕 コロナで苦境に

話題 | 神奈川新聞 | 2020年7月12日(日) 11:21

 和のもてなしで会食シーンを彩ってきた横浜市港南区の懐石料理店「花里」が19日、閉店する。静かな日本庭園と旬の食材を使った季節料理が市内外の客を引きつけてきたが、新型コロナウイルスで苦境に立たされ経営継続を断念。切り盛りしてきた親子は「庭の景色を見てもらえなくなると思うと心残り」と惜しみながら、40年超の歴史に幕を下ろす。

懐石料理店「花里」で思い出を語る利晃さん=横浜市港南区
懐石料理店「花里」で思い出を語る利晃さん=横浜市港南区

 「時代の流れもあったが、もう少し庭を見ながらゆっくり料理を味わってもらいたかった」。店を運営する伊澤千惠さん(70)は、活気に満ちていた「おせち料理」の重詰めなどを振り返りながらつぶやいた。

 会社員だった夫の信高さんが転職し、1978年に開店。信高さんの両親が暮らしていた住まいの「手入れの行き届いた広い庭を多くの人に見てもらいたい」との思いもあり、店舗兼住宅の懐石料理店を始めた。

 企業の宴会などで常連客が増えていき、十数年後には増改築したレストランや個室7部屋が予約で埋まる日々が続いた。スペイン大使の公的なレセプション会場として使われたこともあったという。

 しかし、2009年に信高さんが急逝。千惠さんとともに引き継ぐことになった長男の利晃さん(36)は「父が築いた客層や業務の幅広さに驚くことが多かった」。店を手探りで経営してきたが、リーマン・ショック以降の長引く景気低迷で客数は減っていった。

 今年3月からはコロナ禍が直撃し、会食予約の9割以上がキャンセルに。外食控えの中で懐石弁当や総菜の持ち帰りメニューなども取り入れてきたが、先の見通せない状況を踏まえ閉店を決断した。利晃さんは引き継ぐ前から壊れたままの水琴窟を見ながら、「いつか直したいと思っていたのに残念。ここを守れずに悔しい」と唇をかむ。

 恒例行事として思い起こされるのは、クリスマスシーズンから始める「おせち料理」の仕込み風景だ。料理人が作った煮物や焼き物などをスタッフ一丸で重箱に詰め、昨年末も180食分を作った。大みそかに一つずつ風呂敷に包み、客に手渡して一年を終える。

 「一年の初めの味はここで」と、毎年楽しみにしてくれているなじみ客らに閉店を伝えると、一様に残念がる声が返ってきたという。2人は「心残りではあるけれど、皆さんがここを好いてくれ、惜しまれて閉めるのはうれしい」と、閉店まで笑顔で客を出迎えるつもりだ。

 
 

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