鎌倉時代に建立され、けんちん汁の発祥の地とされる建長寺(鎌倉市山ノ内)で25日、5千食を振る舞う催しが初めて開かれた。「建長まつり」と銘打ち、同寺が日頃の感謝を込めて1年掛かりで企画。晩秋の境内で地元住民や観光客らが歴史深い味わいを堪能した。
同寺によると、建長寺は1253(建長5)年、鎌倉幕府5代執権北条時頼が建立。同年11月25日に落慶法要が執り行われた。けんちん汁は同寺の修行僧が調理の際に落とした豆腐を、開山・蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)が「もったいない」と洗い、手で崩して野菜汁に入れたのが始まり。当初の「建長汁」がなまり、「けんちん汁」として伝わったとされる。
同寺は「支え続けてくれた地域の方々へ恩返しがしたい」と、けんちん汁を大規模に振る舞う催しを準備してきた。より多くの人に味わってもらおうと、僧侶らは山形県を訪問。直径約6・5メートルの鍋で芋煮を振る舞うイベントを視察し、地元の商工会議所から直径約2・3メートルの鍋を借り受けた。
開催は落慶法要に合わせて、この日を選んだ。僧侶や市内の料理人、主婦らが朝5時半から調理するなど約160人が運営に参加。訪れた老若男女は豆腐や根菜がたっぷり入った香り立つ一杯をほお張り、暖を取った。
鎌倉市の女性(42)と長女(8)は「具だくさんで温まる。また食べたい」と笑顔。石澤彰文宗務総長は「子どもたちを含め、多くの方が建長寺に足を運び、楽しい一日を過ごしてくれればうれしい」とほほ笑んだ。
会場では、県立湘南台高校(藤沢市円行)吹奏楽部の演奏なども行われた。