伊勢原市下糟屋の高部屋神社に伝わる汐汲(しおく)み神事が8日、大磯町の照ケ崎海岸で執り行われた。神事は明治初頭に途切れたが、昨年、約150年ぶりに復活した。氏子が海に入り、秋の例大祭で使う海水や海藻、浜の砂を採取した。
同神社は、海の神様で照ケ崎海岸に上陸した言い伝えのある「住吉三神」をまつる。平安時代から明治初期まで、氏子と祭司の僧侶が約15キロ離れた同海岸で海水と海藻のホンダワラ、砂を採る神事を行ってきた。しかし明治初頭の寺院や仏像を破壊する廃仏毀釈(きしゃく)で僧侶が追放され、神事は途切れた。
この日は、伊勢原や大磯の住民ら約50人が見守る中、宮本佳昭宮司(55)が海に向かって神事を執り行った。続いて白装束の氏子3人が海に入り、ひしゃくで海水をすくった。
氏子総代代表の服部登志夫さん(68)は「復活2年目も無事に終わり、ありがたく思う。神社で最も大切な神事を、毎年続けていきたい」と話した。
秋の例大祭は16日に行われ、砂を本殿や拝殿の四隅にまく「浜砂撒(ま)きの儀式」が行われ、ホンダワラは拝殿と鳥居に飾る。海水は火災予防の「鎮火水」として使われる。