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「出穂」販売スタート
幻の川崎地酒復活 市民や農家手携え

話題 | 神奈川新聞 | 2018年6月8日(金) 02:00

出穂を手に「地酒復活のストーリーも含め、味わってほしい」と話す田村さん =川崎区の事務所
出穂を手に「地酒復活のストーリーも含め、味わってほしい」と話す田村さん =川崎区の事務所

 川崎産の酒米で造った地酒を復活させようと、2年前に始まった市民らの活動が実った。「出穂(しゅっすい)」と名付けられた日本酒が3月に完成し、市内の酒店で販売を開始した。復活には市民、農家、谷戸の保存会、酒造会社、酒店が関わった。地酒を介して新たな交流も生まれている。

 市内では十数年前、市北部の農家と酒店が協力して山田錦を使った地酒「田ゆう」を販売していたが、農家の高齢化などで生産中止となった経緯があった。

 「農園フェス」など川崎産の農産物をまちづくりに生かす活動をしている一般社団法人「カワサキノサキ」代表理事の田村寛之さん(39)が「田ゆう」に携わった宮前区の梨農家・持田正さんと出会ったのが、幻の地酒の復活につながった。

 「田ゆう」を造っていた当時、酒米の収穫後に田んぼでコンサートを行ったと持田さんが振り返った。「あの時は楽しかったな」。その言葉を聞き、田村さんは思い立つ。「だったら復活させてみよう」

 酒造りの大変さも知らず、動き始めた。

 「田ゆう」を醸造した海老名市の「泉橋酒造」に何度も足を運んだ。2016年に地酒復活プロジェクトを旗揚げ。市内の若手農家や「田ゆう」に関わった酒店などに声を掛けた。キックオフイベントに60人近くが集まり、当時の関係者がトークセッションした。

 泉橋酒造から「楽風舞」という酒米がいいと提案があった。多摩区の農家に育ててもらうとともに、宮前区の「飛森(とんもり)谷戸の自然を守る会」から水田を借り、趣旨に賛同した市民が田起こしから加わった。地酒を醸造する酒米は農家が収穫したものを使った。市民らが収穫した稲は、今後の酒米の種もみとなる。

 今年3月、ようやく地酒が出来上がった。「稲穂が新たに出た」という意味で『出穂』と名付けました」と田村さん。出発点となった「田ゆう」への思いを込め、ラベルには「田を遊び 田で友と 穣(ゆたか)に喜酒なるを」と記した。

 「まさか本当にできるとは思わなかった。すっきりとした味わいで飲みやすい」。参加者の感想がうれしかった。「地酒の力で生まれた市民や農家との交流が今後も長く続けばいい」と田村さんは話す。

 9日、市民が参加し、田植えを行う。谷戸の自然を守る会のメンバーも訪れ、地域がにぎやかになるのを喜んでいるという。

 「出穂」は1800ミリリットル入り3200円、720ミリリットル入り1700円(いずれも税別)。幸区の「たけくま酒店」ほか、中原区の「oonoya」小杉店、元住吉店など4店舗で販売している。

 
 

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