「筆談ホステス」という異色の経歴を持つ東京都北区議の斉藤里恵さん(34)ら聴覚障害議員の講演会が27日、川崎市中原区の市国際交流センターで開かれた。市民ら約300人を前に手話や音声翻訳ソフトなども使いながら、斉藤さんは自らの経験を基に「障害はマイナスではなく、個性であり、強み」と強調。「多様性の向上はみんなで行うこと。障害者も同じで、誰かに任せるのではなく、共に同じ方向を目指すことが大切」と呼び掛けた。
市聴覚障害者情報文化センター(同区井田三舞町)まつりの一環。埼玉県戸田市議の佐藤太信(たかのぶ)さん(38)とともに「多様性を認める社会を目指して」をテーマに話した。
斉藤さんは1歳の時に病気で聴覚を失ったが、「人と関わることが好き」と接客業に挑戦。銀座の高級クラブで筆談接客を経験し、その半生を記した著書「筆談ホステス」がベストセラーに。2015年から区議となった。
その選挙の際、聞こえないので思うように話せず、駅前での演説ができなかった。「当時は思いを書いたチラシの配布も禁止されていた。ボードを使って、得意の筆談で思いを伝えようと思ったが、広告と見なされるので使えなかった。公職選挙法は障害者の立候補を想定していなかった」と振り返った。
当選後は、音声読み上げソフトや音声同時翻訳ソフトを使って議会活動を展開している。傍聴席でも、議論が文字で表示されるタブレットが貸し出されるようになり、聴覚障害者の傍聴や政治参加が進んだと報告。「まだまだ課題はあるが、トライ&エラーを繰り返して挑戦することが多様性の向上」だと力を込めた。
同センターによると、聴覚障害議員は01年に長野県白馬村で誕生し、これまで計4人が当選している。