横浜市中区の山下公園前に係留・保存されている「日本郵船氷川丸」に26歳の女性ガイドが誕生した。2年越しで氷川丸の歴史や船体構造などを学んできた安藤李恵さんは「重要文化財に指定された氷川丸がたどった歩みをこれからも伝えていきたい」と意気込んでいる。
安藤さんは日本郵船の船長だった祖父の影響で、幼いころから船が好き。日本郵船のグループ企業に勤める安藤さんはグループ報「YUSEN」に掲載された「クラブ氷川丸」の記事に興味を持ち、2016年に加わった。
クラブはグループ社員ら有志でつくるボランティア組織。毎月第2・4土曜日に船内ガイドツアーや船内の設備の真ちゅう磨きを行っている。約20人の中心メンバーは60代前後が多く、飛び抜けて若い安藤さんを交えて勉強会を重ねてきた。
安藤さんにとって氷川丸は幼いころに親に連れられて来たほか、学生のころに正月の餅つき大会に参加するために友達と訪ねた程度。2年近くをかけて氷川丸の案内ポイントを教わり、今月13日に初めてガイドツアーに立った。
埼玉から訪れたという5人を連れて1時間余り、船内を紹介した。アール・デコ調の船内装飾が見どころの1等社交室や1等喫煙室では、解説する内容を書き留めたノートを両手で抱きしめて緊張した様子。操舵(そうだ)室で東京スカイツリーを探したり、楽しそうに舵輪を動かしたりして楽しむ参加者の姿を見て笑顔が戻った。
クラブ氷川丸の安永豊事務局長は「初めてにしては上出来。氷川丸の生涯を次の世代に語り継いでほしい」と期待する。安藤さんは「氷川丸が多くの人たちに愛されて、今も大切にされていることを、ガイドツアーを通じて伝えたい」。参加者の氷川丸への理解がさらに深まるよう、さらに勉強に励むつもりだ。