
NPO法人川崎寺子屋食堂が運営する、学習しながら食事ができる「寺子屋食堂」が今月、川崎市多摩区で始まった。小学生から高校生までを対象に、ボランティアが勉強を教え、合間に食事もする。母子家庭や生活保護世帯などの子どもたちを支援し、家庭の状況による教育格差を縮めようという取り組みだ。
寺子屋食堂は、同区の「長尾いこいの家」と「菅いこいの家」の2カ所を利用した教室で週計4回、平日午後5時から9時まで4時間開かれている。大学生や定年を迎えたボランティア講師ら約30人が指導。子どもたちと講師が一緒にケータリングの夕食を楽しむ。学習指導、夕食とも無料なのが特徴だ。
今年8月まで大手予備校で35年ほどの指導経験を積んだ理事長の竹岸章さん(70)が、今月5日に始めた。「子どもは親の経済事情に左右されて教育を受けるべきではない。勉強の面倒だけでなく、一緒に食事を楽しみ心の安定も得てほしい」と動機を語る。
13日夜には長尾いこいの家に、さまざまな家庭の事情がある女子児童、母親が外国籍で日本語が不十分な男子児童らが算数や漢字の勉強に訪れた。
講師を務める一橋大学4年生の後藤航巳さん(22)は「インドネシアで日本語ボランティアに就き、両国の教育格差を実感した。日本国内にも同じ問題があり子どもたちの役に立ちたかった」、都内の医大の研究所を退職した元研究者の男性(76)は「高校生に得意な数学を教えたかった」と、それぞれ話した。
教室の近くから通う児童たちは「教室が静かで先生が分かりやすく教えてくれる」「家では宿題しかやらない。勉強より夕食の方が楽しみかな」などと、うれしそうだ。
年間約450万円かかる運営費は、寄付や竹岸さんの私財などで賄っている。竹岸さんは、寺子屋食堂を10年以上続け、子どもたちが専門技術や資格を得て自立することを望んでいる。
寺子屋食堂では定員にまだ余裕があり、利用者を受け付ける。25日午後6時から長尾いこいの家でクリスマスパーティーがあり、参加希望者は事前に連絡が必要。問い合わせは、川崎寺子屋食堂電話044(299)7474。
