水の恵みに感謝しながら、新酒醸造の安全などを祈願する「酒祭(さかまつり)」が5日、比々多神社(伊勢原市三ノ宮)で執り行われた。同祭の「お水取り神事」で利用される三段の滝は昨夏から水が枯れているが、今年は湧き水をポンプで滝上流まで送って流し、行われた。
同祭は約1300年前に始まったとされる伝統行事で、今年は市内外の蔵元、酒販店の関係者ら約30人が参列した。参列者は神社から約2キロ離れた「三段の滝」の水をひしゃくでくみ、県重要文化財の土器「鶉甕(うずらみか)」に入れ、商売繁盛を祈った。
栗原川上流にある三段の滝は昨夏から水が枯れ、川の流量も減った状態が続いている。滝近くの山中で新東名高速道路「高取山トンネル」の掘削工事が行われており、市は水が枯れた一因に、トンネル内に周辺の地下水が流出したとみられることを挙げている。
昨年の同祭では周辺の湧き水を代用したが、今年は事業主体の中日本高速道路がトンネル内に流出した湧き水をポンプで滝上流まで送って、水の流れをつくった。
参列した金井酒造店(秦野市堀山下)は今週にも新酒の仕込みを始める予定。佐野博之専務(47)は「いよいよ酒造りが始まると思い、身が引き締まる思い」と話した。
比々多神社の永井武義宮司(53)は三段の滝について「元に戻ることが一番。多くの人の協力で、今年も祭りができることはありがたい」と話した。