台風15号の影響で、あちこちで鉄道が止まり、被害に苦しむ姿を見て思い出した。昨年9月下旬、豪雨被害から立ち直りつつある中国地方を訪れた。
山陰線宍道(しんじ)駅で木次(きすき)線に乗り換えるため列車を待っていたら、思いも掛けず貨物列車が到着した。山陽線が不通になったため、山陰線に迂回してきたのだ。
木次線の列車は午前11時すぎに出発。座席にぽつぽつ座っていた客は次第に減り、スイッチバックが人気の出雲坂根駅に着いたときには、鉄道好きと思われる3人だけ。
終点の備後落合駅で下車したが、芸備線の広島方面は、この年7月の豪雨で橋が落ちるなどの被害が出て、ストップしたまま。鉄道ファンは折り返しの列車に乗ったようだ。少し待つと駅前の坂道を降りたところに代行バスが着いた。やや小ぶりと思ったが、客があまりいないため、これでいいのだろう。
備後庄原、さらに三次(みよし)で代行バスを乗り継ぎ、下深川駅でようやく芸備線に乗り、広島駅に着いたのは午後6時過ぎだった。ここからは新幹線がつながっていたが、呉線なども一部不通。豪雨から2カ月経ても復興途上だった。
1年後。芸備線の最後の不通区間が、10月に再開するという。それでも復旧できるからまだいい。全国には、豪雨や地震の被害を受けたまま、再開できない線もある。自然災害の多い日本で、鉄路を維持するのは容易なことではない。(a)