
小田原の新たな名産にしようと、小田原市漁業協同組合青年部がムラサキウニの養殖に成功、初出荷した。スーパーで廃棄されるキャベツの葉や地元産ミカンの皮などを餌に育てた。青年部長の古谷玄明さん(42)は「将来的には個人で取り組む人が出てくれば」と、組合員の副収入となることを期待している。
ムラサキウニは身が少ないために通常は食用にならない。そのため捕獲されずに大量発生して海藻を食い荒らすなど問題になっているところもある。
キャベツを餌にしたムラサキウニの養殖は、県水産技術センター(三浦市)からノウハウを習得。青年部員が3月中旬に小田原の海に潜ってムラサキウニを千個ほど捕り、養殖を始めた。
「ダンベ」と呼ばれる縦約2メートル、横約1メートルの水槽と、50センチ四方のいけすの2種類を試した。いけすは海中に沈めるので自然界と同じ環境だが、ダンベは最初に半分ほどが死んでしまった。それからは水質に気を使い、購入したポンプで常に海水を入れ替えた。
スーパーで廃棄されるキャベツの外側の葉を主に与え、序盤と終盤にミカンの外皮も食べさせた。通常のウニの養殖で身が詰まる6月中旬から7月初旬までは「食いがすごかった。いくら餌を入れても食べた」(古谷部長)。

初出荷を前に開いた6月末の試食会では、それなりに身が入っており、天然もののような渋みがなく、甘みがあった。特に狭い空間にウニを密集させたいけすの方が身が入っていたという。
重量があるから身があるかと期待して割ってみると、水だけだったというものもある一方で、身がぎっしり詰まったものもあった。古谷さんは「当たり外れが大きかった」と反省点を挙げる。7月初旬に約400個を初出荷。地元のスーパーや鮮魚店などが仕入れてくれた。
青年部では来年は千~1500個の出荷を考えている。本業がある部員の負担になるため、このぐらいが限界という。古谷部長は「個体差をなくして、量より質を目指したい」と話している。