
1947年に完成した相模ダムの湖底に沈んだ藤野地区の自然や暮らしを振り返る企画展「藤野-相模川と人々の暮らし展」が25日まで、相模原市の施設「吉野宿ふじや」(同市緑区吉野)で開かれている。湖に沈んだ勝瀬集落の写真や生活道具などを展示し、かつての人々の暮らしを後世に伝える狙い。
市立博物館の主催で、地域住民らでつくるNPO法人ふじの里山くらぶが企画した。
相模湖ができる以前の藤野地区には険しい渓谷があり、さまざまな物資が船で運ばれていた。勝瀬集落は相模川を使った物流の中心地の一つで、桑畑や水田が広がる豊かな地域だった。
企画展では、1日に200人以上が利用していたという相模川の渡船や、集落全景の写真や13年に河原で行われた運動会の綱引きの様子など、数十点の写真が展示されている。
写真をたどることで、勝瀬集落が歩んだ歴史も学ぶことができる。日中戦争が始まると水道用水や電力確保のために相模ダムの建設計画が打ち出された。反対運動が起きたが戦時協力の名の下にかき消される格好となり、勝瀬集落の80戸を含む計101戸が湖底に沈んだ。
会場にはこのほか、かつて使われていた釣り道具なども展示されている。提供した船橋芳夫さん(84)=同市緑区吉野=は小学生のころ、ダム完成前の相模川で泳いだという。「ダムができて大きく変わった地域の歴史を多くの人に知ってほしい」と話している。
午前10時から午後4時まで。入館無料。13、19日は休館。11日には市立桂北小学校元教諭の佐藤久美子さん、25日には勝瀬集落元住民の小野完治さんのギャラリートークが行われる。いずれも午後1時半から。
問い合わせは、ふじの里山くらぶ電話042(686)6750。