
日本人初の宇宙飛行士で元TBS記者の秋山豊寛さん(77)が10日、横浜市中区の日本新聞博物館で講演した。「宇宙特派員、土と向き合う」と題し、宇宙ステーションでの体験談や農家に転向した心境の変化などを披露。約60人の参加者は、地球の環境を守る大切さに思いを巡らせた。
秋山さんは1990年12月、民間企画の宇宙特派員として旧ソ連の宇宙ステーションに滞在。50代でTBSを退職後に福島県でシイタケ農家になったが、東日本大震災の原発事故で避難生活を余儀なくされた。現在は三重県で有機農業を手掛けている。
秋山さんが宇宙に行った平成初期、世間では地球環境問題への関心が高まりつつあった。そのさなかに高度400キロの上空から見つめた美しい地表、無数に現れる流れ星…。「地球を傷つけないライフスタイルはないものか」との思いを強くし「自然との共生を求め、地方移住と農家への転身を決意した」と振り返った。
宇宙船搭乗が実現するまでの時代背景や、冷戦時の米国と旧ソ連の宇宙開発競争などにも触れ、来場者の興味を集めていた。
講演会は、同博物館で開催中の報道写真展「平成の軌跡 そして令和へ」(新聞通信調査会と同博物館の主催)の関連企画。同展では秋山さんの写真や宇宙ステーションで着用した作業服も紹介している。